どんなに周到に作戦を巡らしても、当然その通りにはならない。

勿論、目論見通りになればしめたものだが、そんなに簡単に物事がスンナリいけば、人間、努力は要らない。

だから、知恵と度胸、そして臨機応変さが必要となる。

これらは得てして先天的な部分と、後天的に努力して培うものと、おおよそ二通りある。

特に経験したことから何を学ぶか、それがかなりの比重を占める。

経験するだけでは意味がない。
それをどう転化させ、応用を効かせていくか、それが「能力」だ。

どのポジションでも経験は大切だが
セッターが特にそうだ。

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何通りもの攻め方を収得し、そして相手のくせや弱点を掴む。

しかし、分かった頃には相手が引退していたり、レギュラーが変わっていたりと、堂々巡りだ。ただ、経験したことが蓄積され、身に付くと、感覚が研ぎ澄まされていく。

頭の良い人なら、経験したことが後の人生に役立つ。

修練はどの世界に行っても必ず必要だ。

例えば、20世紀最高のミュージシャンと言われるビートルズ。


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彼らはデビュー前、ドイツのハンブルクに渡り毎晩8時間もステージに上がった。 それも毎日毎日だ。 荒っぽい場末のクラブで、時には椅子が飛んでくる中、客の目を惹き付けるステージと演奏技術を磨いた。

それが、後に役に立った。

デビューして2枚目のシングル「Please please me」が大ヒットしたため、急遽、同名の彼らのファーストアルバムが作られることとなった。

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ところが、彼らに与えられた時間はたったの1日。 アルバムに収録されるのは14曲。

そのうちすでにシングルで収録済みの4曲を除くと1日10曲の超人的なハイペース。
滅茶苦茶な話だ。

殆どの曲がオーバーダビングなどない一発録り。

せいぜいあっても2テイク。

今の時代ならブラック企業と訴えられそうだが、彼らはこの難題を見事にこなした。

ハンブルグで1日8時間演奏していた腕と度胸が役に立ったのだ。 レパートリーや持ち歌が少なかったら、いきなり1日で10曲などとても不可能だ。

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ラストに収録された「Twist and shout」に関してジョン曰く「ただ怒鳴っていただけ」というほど。
喉が持たないから、キツイこの曲をラストにしたのだとか。

実はこのアルバムが出たキッカケとなった初のヒット曲「Please please me」にも、曰くがある。

当初、プロデューサーだったジョージ・マーティンは「How do you do it」という曲を用意していたのだが、録音したところどうもパッとせず、ビートルズのメンバーはジョージに「オリジナルで勝負させて欲しい」と直訴したそうだ。

デビューしたての新人がプロデューサーに抗議するなど前代未聞である。

しかし、ジョージは敢えてそれを認め、ジョンは出来かけの「Please please me」をテンポアップさせ、ハーモニカでアレンジしたものをジョージに聴かせた。

この曲でゴーサインを得たビートルズは「Please please me」で初のヒットを獲得。

その成功によりビートルズはたった1日のレコーディングで作られたアルバム「Please please me」のヒットでその後の世界的成功の礎を築いた。1日10曲のレコーディングもさることながら、それが大ヒットするのもすごい。nbsp;

世界一のバンドも成功にたどり着くまでそれなりの経験とリスクを背負い、プレッシャーにうち勝った。

努力する者が全て報われる訳ではないが、幾らぶっつけ本番と言っても、フロックだけで世界一になれる筈もない。

全ては「経験」と「修練」の積み重ね、そして、そこで得た「能力」や「度胸」。 

それらがあればこその
「ぶっつけ本番」 The Beatles/Please Please me