2014/15シーズン。
Vプレミアリーグを制したNECレッドロケッツにて、シーズン限りにてユニフォームを脱いだ一人の選手がいた。

キャプテン・秋山美幸選手(当時)。
悲願の達成により、桜の満開の時期に静かにコートを去った。

あれから2年。
後事を託されたこの選手は、試行錯誤と努力の末に、チームになくてはならない選手となった。

かつて近江あかり選手、吉村志穂選手とともに東海大カルテッドと謳われたその選手は、山口かなめ選手。

17310139_1207078616076381_3487775243068751041_o



今やNECレッドロケッツの中枢を担う司令塔に成長した。

多くのバレーボーラーがそうであるように、山口選手もまた、小学校からバレーボールを始める。高校時代、四天王寺高校にてキャプテンを務め、春高やインターハイに出場。

進学を決意したその進路は関東の強豪校、東海大。山口選手はそこで近江、吉村選手と出会い、一年生当時から早くも頭角を表すと全日本インカレ準優勝。
躍進は続き、ユニバーシアードの日本代表に選出され、更に悲願の全日本インカレに優勝。大会MVPにも輝き、両手に花を添えてJTマーヴェラスに入団した。

ルーキーイヤーの2012/13シーズンでは早くもレギュラーセッターとして活躍するも、チームは低迷期にあった。
それまでチームの大黒柱であった竹下佳江さんや山本愛さん(当時)が次々と退団。チーム力の低下を取り戻そうとするも、翌2013/14シーズン、山口選手はスタメンを橋本直子選手に譲り、控えに回るもチーム力の低下は歯止めが掛からず7位に低迷。チャレンジマッチにて上尾メディックスに敗れ、チャレンジリーグに降格。

b0334008_5571185


山口選手もこのシーズン限りにて退団。
新天地としてかつての同胞、近江あかり選手のいるNECレッドロケッツに移籍した。

当時、NECは転換期にあった。
体制が一新され、若手中心に移行しつつある中、秋山キャプテンと山口選手のセッター二枚体制で臨んだNECは、近江あかり選手、島村春世選手ら現在の主力となる選手を始め、ルーキー柳田選手、内定選手古賀選手の活躍もあり、久光製薬スプリングスの三連覇を阻み優勝。
山口選手も初のベスト6に輝き、前途は揚々かに見えた。

15658288599_86036aa9b0_b


ところが、明けて2015/16シーズン。
NECは開幕に前年の新人王・柳田選手が間に合わず、更に大野果奈選手がドーピング検査に引っ掛かり出場停止。更に近江あかり選手も故障と中々起動に乗らず、体制がようやく整ったファイナル6では3勝2敗を上げながらファイナル3進出を逃す。

bandicam-2016-02-18-01-54-02-072


山口選手はこの年から引退した秋山選手に代わりレギュラーを務めるも、責任の重さから思うようなプレイが出来ず、本領発揮とは言えなかった。

明けて2016/17シーズン、NECは体制が整った。

チャレンジリーグⅠのJAぎふを3位に導いたセッター、正里菜選手が入団。前年新人王の古賀選手に加え、ブルガリアのエース、ニコロバ・エミリア選手が加入。成長著しい上野香織選手や
将来性豊かな廣瀬七海選手など体制が充実。

17359064_1208380602612849_1038158869964755460_o


何よりも山口選手にとって頼もしくもあるライバルの出現により、チームは躍進。
開幕から中盤までは苦戦傾向にあるも、一度起動に乗れば連戦連勝。
レギュラーラウンドを堂々の一位通過すると、ファイナル6も首位通過を決め、ファイナリストとなる。

相手は長岡選手を欠きながら、セッター古藤選手や野本選手の活躍など総合力で勝ち進んできた前年の覇者、久光製薬スプリングス。

その第一試合、双方譲らぬまま第四セット、岩坂名奈選手が肩を痛めるアクシデント。それでもNECの勢いが勝り、初戦を勝利する。

連勝して勝負を決めたいNEC。この年から採用のゴールデンセットに持ち込むたい久光。

image


第二戦は第一戦同様激しい試合となり、またしてもフルセットに突入。しかし、その時点で総合的に優るNECの前に久光が力尽き、連勝でNECが二年ぶりの優勝を成し遂げた。

image


勿論、その司令塔は山口選手。
この一年の活躍が認められ、再びベスト6の栄誉に輝いた。

とはいえチャンピオンとなったNECは忙しい。

黒鷲旗、そして世界クラブ選手権が待ち構え、その後にはサマーリーグが控える。
もし、日韓トップマッチが実施され、アジアクラブ選手権に出場ともなれば、相当なハードスケジュール。

多忙はチャンピオンの宿命。
NECが新たな王者となるために、その中心として走り続ける。

17349976_1207075682743341_5820655120981535060_o


勿論、山口選手はチームの中心として、なくてはならない重要な司令塔。