2014世界バレー。
第一戦のアゼルバイジャン戦。
石田瑞穂選手のサーブが走り、第一セット8ー0というこの上ない楽勝ムードの試合から一転、衝撃が走った。

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弾丸のようなジャンプサーブ、そして二階から打ち下ろされるような強烈なスパイク。

サーブが早くアウトになってくれ、そう思えるほど強烈なサーブはまさに男子顔負け。

当時の日本は世界ランキング3位。一方のアゼルバイジャンは37位。
ハイブリッド6を引っ提げ、ワールドグランプリで銀メダルを獲得、世界バレーでも前回の銅メダル以上の結果が期待され、勝って当たり前の空気の中、第二セット以降雲行きが怪しくなり、遂にフルセットの末、日本は敗れた。

試合の流れを変えたアゼルバイジャンの大砲は今、日本のVプレミアリーグで活躍し、日本人以上に日本を愛し、すっかりVリーグの顔になった。

心優しき蒼い瞳のサムライ、ポリーナ・ラヒモワ選手。

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彼女の日本上陸はセンセーショナルだった。

2015/16シーズン、トヨタ車体クインシーズに入団を果たした彼女は弾丸のようなジャンプサーブで相手を圧倒、ブロックの上から打ち下ろすアタックで得点を量産。

毎試合ベストスコアを収め、世界トップクラスの実力を遺憾なく発揮。苦戦傾向にあったトヨタ車体をファイナル6に進出させる原動力となり、シーズンを5位で終えた。

特筆すべきはサーブ効果率。
それまでの記録を大幅に更新し、得点王、サーブ効果率の二冠に輝き、ベスト6、Vリーグ特別表彰を受賞。

彼女の登場によりVプレミアリーグはサーブレシーブを強化せざるを得なかったほどだ。

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しかし、毎試合フル出場、全力プレイの代償は高くついた。見るたびに厚くなる肩のテーピング。酷使した肩の状態が懸念された。

だが、ラヒモワ選手は日本のVプレミアリーグで強打だけがバレーボールではないことを覚えた。フェイント、軟打を交え、肩への負担を軽減するとともに旨さも身につけた。

チームもまた、ラヒモワ選手の状態を懸念するとともに、より強いチームとなるよう、荒木選手の加入でセンター線が強くなり、小田選手が攻守の要として、もうひとりのサイドアタッカーとして高橋沙織選手が躍進。

チームは近年ない戦力の充実でレギュラーラウンドを5位で通過。

迎えたファイナル6では前半戦を2勝1敗で乗り切り、ファイナル3進出に王手を掛けた。

しかし、終盤、日立リヴァーレに敗れ、ファイナル3進出を懸けた東レアローズとの一戦ではラヒモワ選手が封じられ惜敗。

ここにトヨタ車体の一年は終わった。

無理を押して出場し続けるも無理が祟り、後半息切れする場面もあったが、ラヒモワ選手の活躍なくしてはトヨタ車体の躍進もなかった。

黒船襲来を思わせる近年最強外国人選手はいつの間にか、チームにもファンにも愛され、日本を愛してくれた。

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アゼルバイジャンの大砲は、いつしか蒼い瞳のサムライになった。

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試合では率先して声を掛け、積極的にコミュニケーションを計り、チームの一員としてなくてはならない存在となった。

先日のオールスター戦では誰よりもはしゃぎ、乙女な一面も見せたラヒモワ選手。

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またいつか、世界を舞台に敵味方に分かれることはあるかもしれないが、来年もまた、Vプレミアリーグのコートをもり立て、トヨタ車体クインシーズの優勝のために活躍されることを切に願う。