セッターはぽっと出では務まらない。
次の全日本を指揮する中田久美監督曰く、セッターを習得するのに10000時間の練習が必要であるという。
この選手も叩き上げ。
高校時代は春高準優勝を果たし、
Vリーグ入団後は
中道瞳選手の背中を見ながら育った。
押しも押されもしない
東レのレギュラーセッターと言えば
田代佳奈美選手
2016年、彼女はついにオリンピアになった。
コートネーム:ジン
生年月日:1991/03/25
身長(cm):173.0
最高到達点(cm):283.0
出身地:滋賀県栗東市
出身校・前所属チーム:古川学園高校
■個人成績・戦績:
・個人タイトル
東レアローズ
・団体成績
・全日本
2007年アジアユース選手権優勝
第一回U-23世界選手権 銅メダル
・Vプレミアリーグ
東レアローズ
2010/2011 Vプレミアリーグ 準優勝
2011/2012 Vプレミアリーグ 優勝
2012/2013 Vプレミアリーグ 準優勝
第59回黒鷲旗大会準優勝
2011年度 天皇杯・皇后杯優勝
・高校
古川学園高校
第39回全日本高等学校選手権大会 準優勝
田代選手は高校時代、名門古川学園高校のキャプテンを務め、春高準優勝。アジアユース優勝などを経て、名門東レアローズへ駒を進めた俊英。
頭角を表すのも早く、入団二年目から早くも次の東レのレギュラーセッターへの期待を集める。
ただし、チームにはロンドンオリンピックにも駒を進めた中道瞳選手がいて、レギュラー獲得はまだ先のお話。
飛躍のきっかけは2013年。
この年体制が刷新された第二期眞鍋Japanに初招集。
この年の10月にはU-23世界選手権のキャプテンとして参加。見事三位に輝く。
そして、この時のメンバーのうち、鍋谷選手と島村選手とともにリオデジャネイロオリンピックへ駒を進めることになるのだが、それは先のお話。
世界での手応えを感じた田代選手にチャンスが巡ってきたのはその翌シーズンとなる2014/15Vプレミアリーグでのこと。
所属する東レアローズはV奪回のため、木村沙織選手が復帰、高田ありさ選手も含め全日本選手を4人抱え、下馬評では優勝候補の一角にあった。
ところが、開幕戦の久光製薬スプリングスとの試合を接戦の末落とすと、チームは連敗街道。
さらにセッターの中道瞳選手が故障で戦線離脱。この苦境を救ったのが田代選手。
東レは巻き返しを図るも、この年は6位と低迷。しかし、このシーズンの働きで田代選手はレギュラーの座を掴むこととなり、中道選手から田代選手へバトンは渡された。
開けて2015/15シーズン、東レは復活した。
アメリカ代表、テトリ・ディクソン選手を迎え、東レは輝きを取り戻し、堂々の快進撃を見せる。勿論、司令塔を務めるのは田代選手。
この年、レギュラーラウンドを首位で折り返し、いよいよ東レの王座奪回への機運が高まった。
しかし、テトリ選手がレギュラーラウンド終盤で故障し戦線離脱。暗雲が垂れ込める。
それでも東レはファイナル6を3勝2敗の2位で通過。
ファイナル3では宿命のライバル、久光製薬スプリングスとの死闘が展開される。
この試合をフルセットの末落とした東レアローズは惜しくもファイナルを前に敗退。
だが、シーズンを通じて一番強かったのは東レという印象を誰にも植え付けた。
そして、このシーズンでの活躍が田代選手に大きな転機をもたらす。
全日本シニアへの招集だ。
第二期眞鍋Japanはポスト竹下の穴が中々埋まらず、一番手と言われる宮下遥選手が微妙な状況。
そこで、田代選手にも白羽の矢が立った。
ライバルはベスト6セッター・佐藤美弥選手、そしてJTマーヴェラスをチャレンジリーグⅠで全勝優勝へ導いた田中美咲選手。
リオデジャネイロオリンピックの出場権が掛かるOQTの出場枠を田代選手は獲得。
しかし、チャンスは少なかった。
全日本は木村沙織選手が右手小指を負傷。
韓国戦を落とし、暗雲が垂れ込める。
続くタイ戦は大苦戦の末奇跡の大逆転勝利を奪うも、余談を許さない状況。
田代選手の心中は穏やかではなかっただろう。
しかし、チャンスは訪れた。
最終戦のオランダ戦。
前の試合でリオへの切符を掴んだとて、田代選手にとってはこれが最初で最後のチャンス。
田代選手はこのチャンスを見事に応える。
序盤こそ固かったものの、全日本の課題と言われたミドルを積極的に起用。
特に終盤、山口、島村選手の両ミドルを巧みに使い分け、長岡選手も積極起用。
結果、フルセットの末日本に勝利をもたらし、全日本はアジア1位として堂々のオリンピック出場を勝ち取った。
何よりも先発出場僅か一回でチャンスを物にしたのは大きく、この試合で事実上、田代選手は合格点を上げる。
続くワールドグランプリでも積極起用された田代選手は、勇躍リオデジャネイロオリンピックへ駒を進める。
比較的精細を欠いた全日本の中で、ハイライトは田代選手。
第一戦の韓国戦を落とし、負けられないカメルーン戦。速攻を織り混ぜ、攻勢をかけるカメルーンに全日本は第一セットを苦戦しながら奪うも、第二セットも8ー3と先行され苦戦。ここで全日本はセッターを田代選手にスイッチ。
この局面で劣勢を建て直すと、以降は安定感を取り戻し、見事勝利に貢献。
普段目立つことの少ないセッターが注目された数少ない局面で、田代選手は期待に応えた。
しかし、世の中そんなに甘くない。
宮下選手の後を受けて先発出場した田代選手だが、世界での経験が少ない田代選手にとって未知の世界。それでも、女王ブラジル戦やロシア戦を経験。以後、宮下選手に先発セッターを譲ることとなるが、ふたりは初めてイーブンの立場となる。
結局、全日本は準々決勝のアメリカ戦で敗退することとなるが、田代選手にとって2016年は大きな飛躍の年となった。
しかし、そんな余韻に浸る暇もなく、チームに戻れば新たな難関が待ち構える。
引退から一転、現役続行が決まった木村沙織選手と迫田選手だが、体力的に元に戻らず、攻撃力が著しく低下。東レはテールエンドに苦戦し、チームはやむなく奇策を投入。
迫田、堀川選手の両オポジットを同時にコートインさせる超攻撃的シフトだ。
この戦術では木村沙織、美里選手のサーブレシーブの負担が大きくなり、不慣れなオポジットもディグやブロックカバーの連携が必須。
当初は懸念されたこの戦術も、リベロを二枚起用し、レシーバーの投入など、年明けとともに起動に乗り、チームは連勝街道に乗り始めた。
しかし、別の問題も起こった。
セッターの白井選手が故障。
当初はやむなくリベロの中川選手を起用するも、やはりそこは急造セッター。
上手くいかない。
この苦境に東レは中道瞳選手を現役復帰させる。
壮絶な覚悟の総力戦の構えを見せる東レは、レギュラーラウンドを6位で通過し、背水の陣でファイナル6に挑む。
勝ち点0でのスタートだけに、ひとつも落とせないサドンデス。まず、初戦のJT戦を苦戦の末フルセット勝ち。
望み通りとは言えないが、大事な初戦を物にした。
いく先は未知だが、遣り甲斐はある。
負けて元々、思いきっていくべし。
これまでも、これからも
常に全力投球。
そして、その先には
次なる進路も待っている。
オリンピアの夢を果たしたその先には
東京の二文字。
少ないチャンスを物にしてきた
田代選手のやるべきことはひとつ。
目の前の勝利を掴み、突破するだけ。
いざ行け、それ行け。
ファイナル6は、まだ、二戦目。
次の全日本を指揮する中田久美監督曰く、セッターを習得するのに10000時間の練習が必要であるという。
この選手も叩き上げ。
高校時代は春高準優勝を果たし、
Vリーグ入団後は
中道瞳選手の背中を見ながら育った。
押しも押されもしない
東レのレギュラーセッターと言えば
田代佳奈美選手
2016年、彼女はついにオリンピアになった。
コートネーム:ジン
生年月日:1991/03/25
身長(cm):173.0
最高到達点(cm):283.0
出身地:滋賀県栗東市
出身校・前所属チーム:古川学園高校
■個人成績・戦績:
・個人タイトル
東レアローズ
・団体成績
・全日本
2007年アジアユース選手権優勝
第一回U-23世界選手権 銅メダル
・Vプレミアリーグ
東レアローズ
2010/2011 Vプレミアリーグ 準優勝
2011/2012 Vプレミアリーグ 優勝
2012/2013 Vプレミアリーグ 準優勝
第59回黒鷲旗大会準優勝
2011年度 天皇杯・皇后杯優勝
・高校
古川学園高校
第39回全日本高等学校選手権大会 準優勝
田代選手は高校時代、名門古川学園高校のキャプテンを務め、春高準優勝。アジアユース優勝などを経て、名門東レアローズへ駒を進めた俊英。
頭角を表すのも早く、入団二年目から早くも次の東レのレギュラーセッターへの期待を集める。
ただし、チームにはロンドンオリンピックにも駒を進めた中道瞳選手がいて、レギュラー獲得はまだ先のお話。
飛躍のきっかけは2013年。
この年体制が刷新された第二期眞鍋Japanに初招集。
この年の10月にはU-23世界選手権のキャプテンとして参加。見事三位に輝く。
そして、この時のメンバーのうち、鍋谷選手と島村選手とともにリオデジャネイロオリンピックへ駒を進めることになるのだが、それは先のお話。
世界での手応えを感じた田代選手にチャンスが巡ってきたのはその翌シーズンとなる2014/15Vプレミアリーグでのこと。
所属する東レアローズはV奪回のため、木村沙織選手が復帰、高田ありさ選手も含め全日本選手を4人抱え、下馬評では優勝候補の一角にあった。
ところが、開幕戦の久光製薬スプリングスとの試合を接戦の末落とすと、チームは連敗街道。
さらにセッターの中道瞳選手が故障で戦線離脱。この苦境を救ったのが田代選手。
東レは巻き返しを図るも、この年は6位と低迷。しかし、このシーズンの働きで田代選手はレギュラーの座を掴むこととなり、中道選手から田代選手へバトンは渡された。
開けて2015/15シーズン、東レは復活した。
アメリカ代表、テトリ・ディクソン選手を迎え、東レは輝きを取り戻し、堂々の快進撃を見せる。勿論、司令塔を務めるのは田代選手。
この年、レギュラーラウンドを首位で折り返し、いよいよ東レの王座奪回への機運が高まった。
しかし、テトリ選手がレギュラーラウンド終盤で故障し戦線離脱。暗雲が垂れ込める。
それでも東レはファイナル6を3勝2敗の2位で通過。
ファイナル3では宿命のライバル、久光製薬スプリングスとの死闘が展開される。
この試合をフルセットの末落とした東レアローズは惜しくもファイナルを前に敗退。
だが、シーズンを通じて一番強かったのは東レという印象を誰にも植え付けた。
そして、このシーズンでの活躍が田代選手に大きな転機をもたらす。
全日本シニアへの招集だ。
第二期眞鍋Japanはポスト竹下の穴が中々埋まらず、一番手と言われる宮下遥選手が微妙な状況。
そこで、田代選手にも白羽の矢が立った。
ライバルはベスト6セッター・佐藤美弥選手、そしてJTマーヴェラスをチャレンジリーグⅠで全勝優勝へ導いた田中美咲選手。
リオデジャネイロオリンピックの出場権が掛かるOQTの出場枠を田代選手は獲得。
しかし、チャンスは少なかった。
全日本は木村沙織選手が右手小指を負傷。
韓国戦を落とし、暗雲が垂れ込める。
続くタイ戦は大苦戦の末奇跡の大逆転勝利を奪うも、余談を許さない状況。
田代選手の心中は穏やかではなかっただろう。
しかし、チャンスは訪れた。
最終戦のオランダ戦。
前の試合でリオへの切符を掴んだとて、田代選手にとってはこれが最初で最後のチャンス。
田代選手はこのチャンスを見事に応える。
序盤こそ固かったものの、全日本の課題と言われたミドルを積極的に起用。
特に終盤、山口、島村選手の両ミドルを巧みに使い分け、長岡選手も積極起用。
結果、フルセットの末日本に勝利をもたらし、全日本はアジア1位として堂々のオリンピック出場を勝ち取った。
何よりも先発出場僅か一回でチャンスを物にしたのは大きく、この試合で事実上、田代選手は合格点を上げる。
続くワールドグランプリでも積極起用された田代選手は、勇躍リオデジャネイロオリンピックへ駒を進める。
比較的精細を欠いた全日本の中で、ハイライトは田代選手。
第一戦の韓国戦を落とし、負けられないカメルーン戦。速攻を織り混ぜ、攻勢をかけるカメルーンに全日本は第一セットを苦戦しながら奪うも、第二セットも8ー3と先行され苦戦。ここで全日本はセッターを田代選手にスイッチ。
この局面で劣勢を建て直すと、以降は安定感を取り戻し、見事勝利に貢献。
普段目立つことの少ないセッターが注目された数少ない局面で、田代選手は期待に応えた。
しかし、世の中そんなに甘くない。
宮下選手の後を受けて先発出場した田代選手だが、世界での経験が少ない田代選手にとって未知の世界。それでも、女王ブラジル戦やロシア戦を経験。以後、宮下選手に先発セッターを譲ることとなるが、ふたりは初めてイーブンの立場となる。
結局、全日本は準々決勝のアメリカ戦で敗退することとなるが、田代選手にとって2016年は大きな飛躍の年となった。
しかし、そんな余韻に浸る暇もなく、チームに戻れば新たな難関が待ち構える。
引退から一転、現役続行が決まった木村沙織選手と迫田選手だが、体力的に元に戻らず、攻撃力が著しく低下。東レはテールエンドに苦戦し、チームはやむなく奇策を投入。
迫田、堀川選手の両オポジットを同時にコートインさせる超攻撃的シフトだ。
この戦術では木村沙織、美里選手のサーブレシーブの負担が大きくなり、不慣れなオポジットもディグやブロックカバーの連携が必須。
当初は懸念されたこの戦術も、リベロを二枚起用し、レシーバーの投入など、年明けとともに起動に乗り、チームは連勝街道に乗り始めた。
しかし、別の問題も起こった。
セッターの白井選手が故障。
当初はやむなくリベロの中川選手を起用するも、やはりそこは急造セッター。
上手くいかない。
この苦境に東レは中道瞳選手を現役復帰させる。
壮絶な覚悟の総力戦の構えを見せる東レは、レギュラーラウンドを6位で通過し、背水の陣でファイナル6に挑む。
勝ち点0でのスタートだけに、ひとつも落とせないサドンデス。まず、初戦のJT戦を苦戦の末フルセット勝ち。
望み通りとは言えないが、大事な初戦を物にした。
いく先は未知だが、遣り甲斐はある。
負けて元々、思いきっていくべし。
これまでも、これからも
常に全力投球。
そして、その先には
次なる進路も待っている。
オリンピアの夢を果たしたその先には
東京の二文字。
少ないチャンスを物にしてきた
田代選手のやるべきことはひとつ。
目の前の勝利を掴み、突破するだけ。
いざ行け、それ行け。
ファイナル6は、まだ、二戦目。
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